現在最も、実用化が期待されているのが、この燃料電池自動車です。この自動車の仕組みは、燃料電池という、その電池自体で電気を起こす装置を搭載しています。燃料は水素と酸素で、この二つが電気化学反応をして電気を起こし、その電力を動力として走行します。そして、その際排出するものは水だけなので、とてもクリーンな自動車といえるのです。

実際に、2002年、トヨタで「FCHV」、ホンダの「FCX」が発売されました。しかし、問題も山積しており、高い製造コストと、それによる高額な価格設定、水素の供給に必要なインフラの未整備、冬季対策など解決されるべき問題も多いといえるでしょう。しかし、これらの、問題が解決された時、最も一般的に普及される公算が大きく、だからこそ、各自動車メーカーが競って開発競争を繰り広げているのです。
燃料電気の詳しい仕組みは、水を分化して酸素と水素にする理科実験とは逆で、酸素と水素をあわせて水を発生させることがその原理です。そして、合わさって、水になるとき電気が発生するのです。

また、その際、熱も発生するので、その熱もエネルギーとして使うことができます。電池燃料の構造は、何段もの層になっていて、その一つ一つをセルと呼んでいます。ひとつのセルで発生する電気は少ないのですが、何層にも重なっている為、大きな電量を得られるのです。
そして、その積み重なったものをスタックと呼びます。その燃料になる酸素と水素のうち酸素は容易く入手できるのですが、水素は天然には存在しないので、天然ガス、エタノール、石油などを改質装置にかけて水素を取り出す必要があります。また、生ごみや糞尿からでた発酵ガスも利用できます。

燃料電池の歴史は、200年も前から始まります。1801年に英国のデービー卿が発見し、その後、同じく英国のウイリアム・グローブ卿が水の電気分解の逆の化学反応によって発電ができることを発見しました。20世紀に入り、英国のベーコン卿が動力源としての実用化研究を開始して、1952年には5kWの実証試験に成功して特許を取得しています。

しかし、当時は石炭や石油の内燃機関が大きく発展していた時代であったので、燃料である水素の保管や供給方法などの技術的問題はもちろん、触媒にプラチナを使うなどの製造コストと低い発電能力、すなわちkWあたりのコストが高い燃料電池は、環境問題への関心が薄かったこの時代に注目されることはなかったのです。しかし、燃料電池が動力として必要とされたのは宇宙開発の分野です。
スペースと搭載能力が限られている宇宙船には、安全で小型化できる燃料電池が動力源として最適で、発電の際に水を生成することも大きな利点でした。宇宙船に初めて採用された燃料電池はゼネラルエレクトロニック社製の固体高分子型でしたが、現在のスペースシャトルには、ベーコン卿の特許を買い取ってユナイテッド・エアクラフト社が実用化に成功したアルカリ型燃料電池が使われています。

宇宙開発の分野で進められた燃料電池の技術とノウハウは、その後の民生用燃料電池開発の下地となっているのです。そして、二酸化炭素排出量の増大による気候変動、化石燃料の枯渇といった環境・エネルギー問題が深刻化してくるにつれて、クリーンな化石燃料の代替燃料として燃料電池の開発が本格化することとなりました。特に二酸化炭素排出量の約2割、石油製品消費量の約4割を占める自動車の分野で開発が急がれてきました。

現在では、発電や家庭用といった民生向けの燃料電池式コージェネレーションシステムが実用化されています。自動車の分野ではまだまだ一般化するにはほど遠いものの、水素直接搭載型のFCEVが少数ながら市販され、実証実験用の水素ガスステーションの運営も行われています。本格的なFCEV時代への実用化への試みがなされているのです。

燃料電池自動車が本格的に実用化されるには、いくつかの課題があることはもう述べましたが、ここではもっと詳しく解説して行きたいと思います。一つ目は高い製造コストです。kwあたりの、たんかが内燃機関の50倍から70倍といわれる燃料電池車は、一台1億円であるといわれています。
そして、その高価格の多くは燃料電池が占めています。量産化によるコスト低減は必要不可欠で、機械工業品の場合、量産化によってコストは10分の1程度には低減可能と考えられています。FCEVについてもそのような試算がある。また必要となるのがコストの1割程度を占めている材料費の低減です。量産体制が整えば製造コストは限りなく低減できるのに対し、材料費は安価な代替材の開発や性能向上による使用量低減などの努力が必要となるでしょう。

次に問題になるのは、冬季などの冷間時に電池内の水が凍結し始動しないという問題があります。また、あまりにも温度が低下すると効率が極端に低下して始動に必要な発電が得られない恐れがあります。しかしこの点は低温下での水素イオン導電性を向上させればクリアできる問題であり、実際ホンダは低温での水素イオン導電性を従来型の2倍に向上させ、マイナス20度の低温下でも始動に必要な分の電解を可能としたスタックを開発しています。
そこでやはり、最も深刻な問題は冬期における凍結ということになります。燃料電池は、電解質膜を水素イオンが通過する際に湿潤状態でなければならないです。また、電極上では膜を通過した水素イオンが酸素と結合して水が生成されています。

すなわち、燃料電池内部では常に水が存在しているのです。そこで気温が氷点下になると、電池内の水は凍結してしまい、燃料電池自体が始動しなくなる恐れがあるのです。
凍結防止のためには、燃料電池のシステム全体を断熱したり、バッテリーを搭載して融解用の電熱線を張り巡らせることなどが考えられます。しかし重量・体積ともにあまり制限を受けない発電用や家庭用の燃料電池システムと異なり、燃料電池自動車ではシステムの複雑化などで簡単にはいかないのが実情であり、開発が急がれるところでしょう。

最後の問題では、水素搭載量の不足のため、走行距離が伸びない点が挙げられます。 それは、燃料を多く積めれば航続距離は長くなるのですが、密度が低い気体である水素を多量に車載するのは困難なので、この問題は起こっています。
そこで多くの燃料を搭載する解決策としては、水素の搭載量そのものを増大させるか、可搬性の優れている液化燃料を搭載して車上で水素に改質するかの二つの方法があります。

開発では、水素を直接搭載する形の方向に進んでいます。現状では高圧圧縮ボンベを搭載する方法が一般的なっています。しかし、水素を高密度で貯蔵するボンベは高圧になればなるほど重量が増し、運動性能に負担をかけるので、現在、市販の燃料自動車には主に複合材を使って軽量化した350気圧のタンクが搭載されています。しかしまだまだ力不足で、700気圧など、軽量を維持できる高圧ボンベの開発が進められています。